まず、LGBTIQA性暴力サバイバーへのサポートを提供するにあたり、必要とされる支援のあり方を確認しましょう。


支援組織むけ:具体的施策や体制整備に向けて


STEP1-4 相談体制を作り、当事者への啓発を実施する

1、被害の実情を理解する

 LGBTIQA+の性暴力被害については、とても暗数の高いものだということが言えます。そもそも、法的に「男性」から「女性」に対するレイプ被害以外をレイプ(強姦)被害と見做してこなかった法律というものが2017年まで日本では存在していました。そうした中で、たとえば同性間の被害であったり、女性から男性に対して行われる被害の実態というものは可視化されづらいものでした。また、LGBTIQA+の当事者であるということ自体に差別や偏見の構造がある社会の中では、そのことが被害の中で関係してくるような場合、自らがLGBTIQA+であるということが公的な場で明らかになることを恐れて被害を訴えることが難しいという側面もあります。

 しかし、国内外においてLGBTIQA+が暴力の被害者になる確率が非常に高いということは言われ続けていることです。実情を知り、想定をしておくことは、被害の相談を聞くにあたって最低限必要なことになります。

 

2、当事者たちが置かれている環境を理解する

 相談を受けるにあたって、その一人ひとりがどのような生活環境で暮らしているのかを理解することはサポート体制を構築する上で非常に役立つことです。性暴力被害が必ずしもそれぞれのSOGIESCに関係して発生しているとは限りませんが、LGBTIQA+の性暴力被害相談を聞く上で、それぞれのSOGIESCに関しての社会的な環境を知っておくことは重要です。

 例えば、それぞれの性のありように関する嫌悪感情を理由とした性暴力被害が発生していた場合、その嫌悪感情の在り方がどのように当事者にとって暴力的なものと成り得たのか、どういった社会的な影響を及ぼすのかということを明確に理解出来るかどうかに関わります。また、当事者が被害を訴えることを躊躇する際、どういったことが障壁となっているのかを理解する上で、社会的な差別・偏見の構造を理解していなければ話が聞きづらいかもしれません。周囲のサポート体制を構築するという上においても、どのような人間関係があり、その関係性の重要性をしっかりと踏まえることが出来るかどうかも重要になります。

 性のありようそのものについて理解することも重要なことの一つですが、それ以上に、環境に関する理解が重要です。

 

3、提供可能な社会資源を明確にする

 「話は聞ける」。確かに、話すら聞いてくれない相談機関が多かった時代からしたら、話を聞いてもらえるだけでも…と言えるのかもしれません。しかし、時代は着々と進めていきましょう。通常、性暴力サバイバーに必要とされる社会資源を、LGBTIQA+の性暴力サバイバーも必要としています。どの社会資源が性のありように関わらず使用出来るのか、出来ないのかということをまず精査することは必要ですが、誰にどういった社会資源が必要なのかを明確にしていく必要があります。

 

 ・医療費・カウンセリング費用等の助成制度に、性別による制限がないか

 ・婦人科、泌尿器科、外科等それぞれの性のありよう/被害の状況に適した医療機関連携はとれているか

 ・連携している精神科、心療内科、カウンセリングなどは性のありように関わらず対応が出来る状況になっているか

 ・連携している弁護士等は性のありように関わらず対応が出来る状況になっているか

 

4、LGBTIQA+を明確に対象とした啓発資材を作成する

 性暴力被害は男性から女性に対して行われるもの、という社会的な認識は未だに強くあります。そうした中で、同性からの被害や男性の被害者などは特に、自らに起きたことを「性暴力被害」と認識することに困難や抵抗感があったり、自らが相談をしてもいい、という認識を持ちにくいという傾向があります。また、LGBTIQA+の当事者は、自らのSOGIESCを含めた相談をすることに、差別や偏見を受けるのではないかという恐怖心から相談をすることが難しいということもあります。

 相談件数が少ないということが被害件数の少なさに直結するものではないということを性暴力被害に関わる人であれば知っていると思います。暗数の多さというのは、社会的な問題です。相談機関に出来ることは、「相談をしてください」と当事者たちに声をかけるということです。1〜3までの流れを経て、どのような性のありようであっても相談を聞ける体制があるということを当事者たちに伝えてください。

 

 一人で悩みを抱えているサバイバーに対して、最低限、安心して相談をすることが出来る環境を作ることが、1〜4によって可能になります。